研究概要 |
【目的】IgA腎症に対する扁桃摘出術・ステロイドパルス療法では尿所見の改善や腎機能保持を認め、扁桃組織が本疾患の成因に重要であることが示唆される。一方IgA腎症ではIgA1hinge部のO型糖鎖不全が報告されている。本研究ではIgA腎症扁桃での糖転移酵素遺伝子の発現動態とIgA分子糖鎖異常の解析を行い、臨床指標との関連を検討した。【方法】IgA腎症患者の扁桃より磁気ビーズを用いてCD19陽性B細胞を分離した後、RNAを抽出しreal-time RT-PCRにて糖転移酵素(pp-GalNAc-T2,β3GalT, Cosmc, ST3Gal, ST6GalNAcIII)遺伝子発現を定量解析した。扁桃IgA糖鎖不全の定量解析のためlectin(VVL,PNA,Jacaline,MAA)binding assayを行った。慢性扁桃炎または睡眠時無呼吸症候群(SAS)の扁桃を対照とした。【結果】IgA腎症の扁桃CD19陽性B細胞ではSAS群と比較しβ3GalT遺伝子発現が有意に低下していた。IgA腎症扁桃抽出液中IgAのVVLとPNAへの結合はSAS群に比べ有意に上昇していた。IgA腎症におけるCcr低下例(≦70ml/min)と組織Chronicity Index高値例(≧2.0)ではβ3GalT遺伝子発現が有意に低下していた。【結論】IgA腎症では扁桃B細胞のβ3GalT遺伝子発現低下によるIgA hinge部のGalactose低下が示唆され、扁桃での糖鎖不全IgA産生機序の一端をなす可能性が示唆された。
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