目的 ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群は、組織学的に巣状分節性糸球体硬化像(FSGS)を呈し、進行性に腎不全に到る難治性疾患である。FSGSは小児期末期腎不全の主因疾患であり、また糖尿病や高血圧等成人の進行性腎障害にも共通する病変である。FSGSの発症機序を分子レベルで明らかにするため、家族性FSGSの疾患遺伝子をマップし、疾患遺伝子を同定する。 背景 近年家族性FSGS症例の遺伝子解析により、遺伝素因の重要性が指摘されている。欧州の家族性FSGSの解析では、NPHS 1-3までの3つの遺伝子が同定されており、特に小児の家族性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の半数以上は、これらの遺伝子変異が原因である。しかし我が国においては、これらの遺伝子変異はなく、欧米とは異なる疾患遺伝子の存在が疑われる。 成果 研究代表者は平成20年4月に現所属機関に転入した。残り1年に成果を上げるために、徳島大学・土井教授と作業を分担し研究を継続した。家族性FSGS16症例+孤発FSGS例8例のマイクロサテライトマーカーを用いたパラメトリック連鎖解析により、多点ロット値がLOD>5-6と有意なスコアを得た。ハプロタイプ解析により候補領域は、約5-8 Mbに絞られた。さらに症例を増やして疾患遺伝子の位置確認を行い、論文作成中である。 意義・重要性 進行性腎障害により腎不全に至る予備軍を慢性腎臓病という新しい疾患概念で取りまとめ、早期治療を講じる対策が進められている。本研究成果で、本邦の固有の疾患因子が明らかになり、治療薬開発や予防方策の確立に繋がると期待される。
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