研究概要 |
1.XOR遺伝子欠損に伴う腎障害の機序。 XORホモマウスの腎障害の機序としては、XOR遺伝子欠損により1)尿酸欠失、2)尿中キサンチン・ヒポキサンチンの排泄亢進と尿細管管腔内への沈着3)脂質異常に伴う中性脂肪に富んだ物質の尿細管管腔内への蓄積が惹起され、その結果炎症・酸化ストレスの増大・虚血・アポトーシスなどが引き起こされると考えられた。さらに、XOR遺伝子欠損により尿細管上皮細胞から線維芽細胞への形質転換が誘導されやすくなり、尿細管間質の線維化が促進され、腎障害が進展すると考えられた。マウス腎臓におけるXOR遺伝子の役割としては、1)腎臓の生後成熟に必須である。2)腎臓における脂肪分化に関与。3)尿細管上皮細胞の線維芽細胞への形質転換の制御に関与。以上の3点が明らかとなった。 2.XOR遺伝子欠損と虚血再灌流障害。 虚血再潅流障害モデルマウスでは、血中BUN, Crの増加、組織学的には皮髄境界を中心に尿細管上皮の壊死・剥離などを認めた。免疫組織学的には線維化に関連するTGF-β,α-SMA, Vimentinなどの発現亢進、マクロファージの浸潤を意味するF4/80陽性細胞の増加、Nitrotyrosineや4-hydroxy-2-nonenalなどの活性酸素障害に伴う産物の増加を認めた。XOR+/+とXOR+/-マウスの比較では、XOR+/+マウスは虚血再潅流後のBUN, Crの増加が有意で、組織学的にも免疫組織学的にも組織障害が顕著であった。虚血再潅流後の血清尿酸値とBUN, Cr値との間には有意な負の相関、つまり虚血再潅流後の血清尿酸値が高いほど組織障害が弱かった。以上の結果より1)XOR+/-マウスは野生型マウスに比べ、腎臓の虚血再潅流障害に対して抵抗性である。2)虚血再潅流後の血清尿酸値と腎組織障害との間には負の相関を認めることが明らかとなった。
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