私たちはこれまでにセリンプロテアーゼのプロスタシンが、腎臓の上皮型Naチャネルを活性化し、生体のNa代謝制御に関与することを示してきた。多くの場合、プロテアーゼの活性はアクチベーターやインヒビターの存在により常に正および負の制御を受け、その拮抗関係により定常状態が成立している。この拮抗バランスが破綻したときに種々の疾患が生じると考えられている。今回私たちは、プロスタシンに対するアクチベーターおよびインヒビターを網羅的に同定することにより、プロテアーゼによるNa代謝および血圧調節機構の分子基盤を解明しようと考えた。まず、プロスタシンのアクチベーターを同定するために、ラット腎臓から組織抽出物を作成した。徳島文理大学の勝沼教授の開発したdouble-layer fluorescent zymography法を用いて、このサンプル中に含まれるプロスタシンアクチベーター活性を評価したところ、候補物質として分子量100kDa、75kDa、30kDa、20kDaの4つのセリンプロテアーゼが認められた。これらの4つめセリンプロテアーゼをイオン交換カラム、ベンザミジンアフィニティーカラム、ゲルろ過クロマトグラフィー、等電点電気泳動などを用いて分離を試みた。その結果、30kDaおよび20kDaのタンパク質の分離に成功し、LC-MS/MS法によりタンパク質を同定した。現在、その他の2つのタンパク質の同定を進めるとともに、同定した2つのタンパク質のプロスタシン活性に与える影響の確認および上皮型Naチャネルに与える影響などを検討中である。
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