研究課題/領域番号 |
19590960
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岩野 正之 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (20275324)
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研究分担者 |
斎藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260)
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (10115280)
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キーワード | ポドサイト / FSP1 / EMT / ELISA / 糖尿病性腎症 / 巣状糸球体硬化症 / 微小変化型ネフローゼ症候群 |
研究概要 |
ポドサイトにおけるfibroblast-specific protein 1 (FSP1)の発現が糸球体硬化の進展に関与するか否かを検討した。微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)38例、巣状糸球体硬化症(FSGS)31例、糖尿病性腎症(DMN)109例を対象とした。糸球体内FSP1および尿細胞中FSP1の発現を免疫染色法で検討した。FSP1mRNAの局在および糸球体内発現量も検討した。FSP1陽性ポドサイトは、MCNSに比しFSGSおよびDMNで有意に増加していた。分節状硬化病変や結節性病変を呈する糸球体では、FSP1陽性ポドサイト数が増加したが、全節性硬化病変ではFSP1陽性ポドサイトは認められなかった。結節性病変を呈する糸球体では、FSP1陽性ポドサイトの基底膜からの剥離が認められた。また、尿中FSP1陽性細胞数は糖尿病性腎症の臨床病期の進展とともに増加したが、腎機能が低下した症例では逆に減少していた。さらに、尿中ポドサイトの80%以上がFSP1陽性であり、FSP1陽性細胞ではアポトーシスが認められなかった。これらの結果から、ポドサイトにおけるFSP1の発現がEMTを惹起し、基底膜からのポドサイト剥離を誘導し、糸球体硬化の進展に関与することが示唆された。つぎに、FSP1発現量を定量するために高感度ELISA系の確立を試みた。リコンビナントFSP1をマウスに免疫することで、FSP1のN末端とC末端を認識する2種類のモノクローナル抗体を作製し、サンドイッチELISA系を確立した。FSPIの測定感度は約1ng/mlであった。10例の健常成入では尿中FSP1が検出感度以下であったが、10例の腎疾患患者では2.3ng/mlから20.6ng/mlの尿中FSPlが検出された。動物実験では、ポドサイト特異的にFSP1を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し、腎病変を解析中である。
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