研究概要 |
糖尿病性腎症患者(DMN)のポドサイトにおけるfibroblast-specific protein1(FSP1)の発現がEMTによるポドサイトの基底膜からの剥離を誘導し、糸球体硬化の進展に関与するか否かを検討した。 DMNでは、メサンギウム増殖の程度および結節性病変の出現に伴い、 FSP1陽性ポドサイト数が増加し、臨床病期の進展とともに尿中FSP1陽性細胞数が増加した。また、 DMNのポドサイトにはEMT誘導因子であるSnaillおよびIntegrin-linked kinase (ILK)の発現が認められ、逆に上皮細胞マーカーであるZO-1の発現が低下していた。ポドサイト細胞株を用いたin vitroの実験系では、 EMT誘導因子であるtransforming growth factor-betaの添加により、ポドサイトでSnaill, lysyl oxidase 1, fibronectin,およびcollagen type1などの間葉系マーカーの発現が有意に増加した。つぎに、ポドサイトでのFSP1発現が生体内でポドサイトの剥離を誘導するか否かを検討した。ポドサイト特異的にFSP1を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し腎病変を解析したが、ポドサイトの剥離は誘導されなかった。 したがって、 FSPIはEMTマーカーとしては有用であるものの、 FSP1単独ではポドサイトの剥離を誘導しないことが明確となった。 さらに、尿中FSP1の発現量が新しいバイオマーカーとなるか否かを検討するためにFSP1に対する2種類のモノクローナル抗体を作製し、 ELISA測定系を確立した。尿中FSP1は、急速進行性糸球体腎炎患者、ループス腎炎患者(ISN分類IV)、半月体形成糸球体が30%以上のIgA腎症など、活動性の高い糸球体腎炎で有意に高く、新しいバイオマーカーとして有用であることカミ示唆された。
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