研究概要 |
現行の血液透析療法に欠如している蛋白結合率の高い尿毒症性物質を除去しうる点を付加した新しいハイブリッド型人工腎臓開発するために、本年度は以下の3点についての研究を行った。 1)ヒト有機アニオントランスポーター(OAT)3型を高度安定発現した培養尿細管細胞を用いて、各種尿毒症性物質が基質であるか否かを検討した。インドキシル硫酸、馬尿酸など様々な酸性尿毒症物質がその基質であることが判明した。インドキシル硫酸のKm、Vmax値はそれぞれ50mM,500000pmol/hr/mg proteinと非常に高いものであった。またこの経上皮輸送がプロベネシド(1mM)で有意に阻害されることも確認した。 2)ハイブリッド型人工腎臓上への培養条件の検討。研究者らが以前より開発してきた、中空糸繊維によるハイブリッド型人工腎臓上への3次元培養の可否について、OAT3を発現させた様々な培養細胞を用いて検討した。接着能および接着後の輸送活性から適当なものをスクリーニングしつつある。繊維の材質についてもポリスルホン以外のものがよい場合なども明らかになりつつある。 3)将来の大動物への応用のために、慢性腎不全イヌ作成を開始した。7/8腎摘除イヌは術後2ケ月程度で安定した血清クレアチニン濃度は2mg/dl、インドキシル硫酸濃度は1mg/dl程度となり、慢性腎不全となることを確認した。 次年度以降、実験治療に最適な細胞・培養条件などを明らかにするとともに、OAT3以外のOATを発現した細胞の開発に着手する予定である。また、インドキシル硫酸の培養平滑筋細胞、内皮細胞への影響も平行して検討する予定である。
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