研究概要 |
加齢に伴う腎障害では腎萎縮ならびに腎機能低下が見られるが、そのひとつの機序の検討として酸化ストレスによる長寿遺伝子シグナルへの影響を検討した。NAD依存性脱アセチル化酵素遺伝子Sir2は酵母、線虫の寿命を伸ばすが、その哺乳類ホモログで最も相同性が高いSIRT1はカロリー制限に伴い発現が誘導され,寿命やストレスに対するタンパクの発現を調節する。ヒト近位尿細管培養細胞(HK-2)にSirt1を導入し過酸化水素によるアポトーシスについて検討したところ、過酸化水素の濃度依存性に投与24時間後のアポトーシス陽性細胞の増加を認めた。さらに、SIRT1上昇の意義を検討するため、SIRT1過剰発現した細胞に過酸化水素を投与したところ、アポトーシスが抑制され、同時にカタラーゼの発現亢進が見られた。さらにSIRT1阻害薬投与のアポトーシスの誘導について検討したところ、濃度依存性にアポトーシス陽性細胞増加を認めた。細胞内局在では、過酸化水素投与で、核・細胞質ともにSirt1の発現が亢進し、Foxo3aは核のみ発現が亢進した。更に、Foxo3a siRNA投与の影響を検討したところ、過酸化水素投与によるアポトーシス増加がFoxo3a siRNAの併用投与で更に増加した。 次に生体におけるSIRT1の機能を検討するためSirt1発現を亢進するカロリー制限を施行した。カロリー制限は尿細管のSirt1発現を亢進し、ウェスタンブロットで約2倍程度の亢進を認めた。一方、糸球体や間質のSirt1発現は変化せず、生体における近位尿細管Sirt1の重要性が示唆された。さらに、腎尿細管局所のSirt1の機能を検討するため、Na・Pcotransporter蛋白のプロモーターを用い尿細管特異的過剰発現マウスを作製した。現在、このマウスを用いた加齢腎への影響を検討している。
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