研究概要 |
糖尿病性腎症における細胞外マトリックス増加のメカニズムには、Matrix metalloproteinases (MMPs)が重要な役割を担っているが、その詳細な検討は未だない。そこで我々はMMP-2 knockout mouse(MMP-2 KO)を使用し、糖尿病性腎症におけるMMP-2の役割について検討した。6週令のMMP-2 KOマウス、C57BL/6J(Ctrl)マウスにstreptozotocin(STZ) 50mg/Kgを腹腔内に投与し、糖尿病モデルを作成した。投与後16週に尿中アルブミン、NAG排泄量、MMP-2活性、組織変化、α-SMA発現を検討した。[結果]Ctrl-DM、MMP-2 KO-DM群では、plasma glucose、HbAlc、収縮期血圧の上昇を認めたが、DM両群間では差はなかった。興味深いことに、MMP-2 KO-DMでは、Ctrl-DMと比較し有意にBUN、Crが上昇していた。尿中アルブミン排泄量は、DMで有意に増加していたが、MMP-2 KO-DMではDMと比しさらに増加していた。尿細管障害のマーカーである尿中NAGはDMで有意に増加していたが、MMP-2 KO-DM群ではさらに増加傾向にあった。腎皮質内MMP-2の発現、活性はCtrlと比較しDM群で有意に上昇していた。組織学的検討では、DM群でメサンギウム領域の基質の増加を認めたが、MMP-2 KO-DMでは著明な尿細管の拡張、細胞の脱落、間質の線維化を認め、それらはα-SMA発現の亢進を伴っていた。以上より、MMP-2のknockoutが糖尿病性腎症進展に関与し、特に尿細管間質病変の進展を伴うことから、腎臓内のMMP-2を調節することが腎症の新たな治療戦略になりうる可能性が示唆される。 また、mouse podocyteを培養し、AGEにて刺激したところ、podocyteのdetachment,AGE濃度依存性のDNA damageがみられた(commet assayにて)。また、それらの変化がARBの投与により改善することから、AGE-RAS系が糖尿病性腎症の発症進展に深く関与している可能性が示唆される。
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