研究概要 |
Matrix Metalloproteinase-2がいかに糖尿病性腎症発症進展に関与しているかについて検討した。CKD患者においてMMP-2の血清と尿蛋白、心血管合併症の関係を検討した結果、血清MMP-2濃度と尿蛋白が有意に正相関し、それには頚動脈の肥厚を伴っていたことから、MMP-2の発現、活性の亢進が心腎連関の一旦を担っている可能性が示唆される。我々はこのことを"Circulating Matrix Metalloproteinase-2 Is an Independent Correlate of Proteinuria in Patients with Chronic Kidney Disease". Am J Nephrol.14 ; 109-115, 2008に報告した。さらに、MMP-2ノックアウトマウスに、STZによるDMを惹起させ検討した結果、予想に反してMMP-2ノックアウト群において尿中アルブミン排泄が亢進し、特に尿細管間質障害が著明であったこと、これにa-SMAの発現亢進が伴っていたことなどから、従来より報告されている、"EMTにMMP-2の発現活性が重要である"という仮説は我々の系では否定的であった。MMP-2ノックアウトのコントロール群においても尿細管間質障害の指標であるNAGが有意に高値であったことから、完全なMMP-2のノックアウトは、少なくとも腎臓においては傷害的に働く可能性が示唆される。今後は他の疾患、例えば急速進行性糸球体腎炎等におけるMMP-2の関与について上記研究と合わせて検討していく予定である。
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