インテグリンは細胞表面に存在するα鎖とβ鎖からなる受容体で、細胞を他の細胞と、あるいは細胞と細胞外基質とを物理的に結合させる働きを持ち、炎症細胞の局所への浸潤や細胞構築の維持に重要な役割を果たしている。我々は各種腎疾患において生じる細胞外基質のリモデリングによりインテグリンを介した細胞内シグナルや遺伝子発現の変化が、病態の進展にどのような影響を与えるのか検討した。培養ヒトメサンギウム細胞で各種細胞接着分子の発現をFACScanで検討したところ、静止期のメサンギウム細胞においてα2、3、4、5、β1 integrins、CD44、CD80の恒常的な発現を認めた。α6、v、β3 integrins、ICAM-1、Fasはわずかに発現していたが、α1、β2 integrins、VCAM-1、CD40、CD40L、CD86は発現していなかった。β1 integrin特異刺激抗体(mAb13)によりβ1 integrinの活性化を行なうとこれらの細胞接着分子のうちICAM-1とCD80のみ発現が亢進した。MHC class IやICAM-1、VCAM-1などの刺激ではICAM-1などの発現に影響を与えなかった。以上より、各種腎疾患においてみられるβ1 integrinの発現亢進は、ICAM-1やco-stimulatory factorであるCD80の発現を介し、炎症細胞浸潤やリンパ球の活性化を引き起こし腎疾患の進展に影響を与えている可能性が示唆された
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