研究課題/領域番号 |
19590973
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研究機関 | (財)生産開発科学研究所 |
研究代表者 |
安部 秀斉 生産開発科学研究所, 腎病態解析研究室, 研究員 (60399342)
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研究分担者 |
荒井 秀典 京都大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60232021)
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キーワード | 糖尿病性腎症 / コラーゲン / BMPs / Smad1 / ALK1 / バイオマーカー / 分子病態 / メサンギウム細胞 |
研究概要 |
1.糖尿病性腎症の発症・進行に中心的な役割を果たす転写因子Smad1の発現の制御機構として、TGFβだけでなく、BMPs(bone morphogenetic proteins)もSmad1をリン酸化することで活性化に関与していることを示した。advanced glycation end-products(AGEs)刺激による糖尿病条件下で、培養メサンギウム細胞における、TGFβ-ALK1-Smad1およびBMP2/4-ALK3/6-Smad1の両経路に関わるSmad1活性化のdualpathwayが病変形成に機能していた。これらの経路を遮断する中和抗体ないしアンタゴニストの投与により、病変形成タンパク群の発現は抑制された。 2.Smad1を直接にリン酸化、活性化させる膜受容体であるALK1の発現制御機構はこれまで不明であったが、プロモーター解析により、直接ALK1の発現を誘導する新規転写因子を同定した。Gel shift assayなどにより、その結合、転写活性の誘導を確認した。これは、メサンギウム細胞において、TGFβのシグナル伝達系路をmodulateすることでALK1の発現を調整することも明らかとした。 3.腎症のバイオマーカーとしての尿中Smad1の検出系を確立し、その検出レベルが実際の糸球体硬化の程度を正確に反映することを示し、検出感度を上昇させることで、早期腎症の病変を来すSTZ誘導糖尿病ラットにおける硬化病変の発症を予測できるマーカーであることを示した。腎糸球体におけるSmad1発現亢進の意義が確認され、糖尿病を惹起後の個体の疾患感受性にSmad1の活性化が関与することも示した。 4.BMP2/4およびSmad1は腎発生に非常に重要な役割を果たしており、ノックアウトマウスは胎生死するため、タモキシフェン誘導型調節発現かつ腎糸球体発現誘導マウスを作成した。腎の正常発生の終了の後、タモキシフェンを投与し、糖尿病性腎症に特徴的な細胞外基質の増加と線維化という組織上の変化を非糖尿病下で抽出することができ、糖尿病性腎症の発症・進展の分子機構を明らかとした。このモデルにおいて、各病期におけるTGF β-ALK1-Smad1およびBMP2/4-ALK3/6-Smad1の両経路に関わるSmad1関連分子の血中・尿中での発現プロファイルの作成が進行中である。
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