研究概要 |
本研究では、小脳を含む中枢神経系全体におけるイノシトールリン脂質を介する情報伝達系の機能について明らかにすること、遺伝性SCAの原因遺伝子の解明、ポリグルタミン病における新規生化学的指標として、筋エネルギー代謝異常を検討することの各々につき研究を行った。その結果、我々の発見した変異を導入したヒトPRKCG cDNA変異型及び野生型を用いてノックインマウスのヘテロ接合体、ホモ接合体の作製に成功し、現在系統維持目的に繁殖中である。また、北海道においても16q-ADCAが高頻度であることや、本邦では点変異に起因するSCA5, SCA13, SCA27の各疾患が稀であることを明らかにした。CACNA1A遺伝子T666M変異を伴う家系において、臨床症状は多彩であるが、頭位変換性下向き眼振が共通して認められる徴候であることを明らかにした。加えて、ポリグルタミン病であるMachado-Joseph病(MJD)にて筋エネルギー代謝測定を行い、筋エネルギー代謝VmaxがMJDにおいて生化学的指標になり得る可能性があることを明らかにした。また、新しい小脳性運動失調の評価スケールであるScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)が、小脳症状の重症度を評価する上で、簡便であり有用であることと、多系統萎縮症において酸化ストレスに関する遺伝子を候補として相関解析を行い、SLC1A4, SQSTM1, EIF4EBP1などが発症に関与する候補遺伝子である可能性を報告した。
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