研究課題
パーキンソン病の神経変性メカニズムを解明する目的で、チロシナーゼを過剰発現させ細胞内にカテコラミン酸化物質を過剰似産生させることにより、細胞死を誘導する独自の培養細胞系を用いて以下の結果を得た。(1)チロシナーゼ過剰発現により、ミトコンドリアを介したアポトーシスが誘導される培養細胞モデルを確立した。(2)上記細胞死の過程において、ガングリオシドGD3の形質膜から細胞質内(一部ミトコンドリア)への局在変化がみられた。(3)チロシナーゼ発現誘導後、初期よりGD3合成酵素(ST8)の発現増加と分解酵素(NEU4L)の発現低下が確認された。本細胞モデルでは、細胞死に先立ってミトコンドリア内GD3の増加が生じていることが示唆された。(4)NEU4Lはヒト中脳で高発現していることが確認された。GD3およびその合成・分解酵素は、ミトコンドリアを介した黒質神経細胞変性に関与している可能性がある。以上の結果は、黒質神経細胞の変性脱落にミトコンドリアの機能障害が関与している可能性が高いことを改めて示唆するとともに、特に黒質神経細胞に強く発現する新規のシアリダーゼであるNEU4Lは黒質細胞の機能維持に深く関わっていることを強く示唆する。今後、パーキンソン病の発症メカニズムに於いて鍵を握る分子であるαシヌクレインの病的代謝過程との関連を検討して行く予定であり、現在、両者の局在の解析、シヌクレインタンパク凝集体との関連を中心に実験を進めている。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
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