研究課題
脊髄小脳失調症6型(spinocerebellar ataxia type 6; SCA6)は、本邦に高頻度に存在する常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症で、α1A-カルシウムチャネル遺伝子内の3塩基(CAG)繰り返し配列が異常に伸長するために起きる疾患である。本研究では、SCA6の基本病態を明らかにし、それに基づく画期的な免疫療法となるモノクローナル抗体療法の開発のための初期研究を行った。まず我々は、ヒトα1Aカルシウムチャネル蛋白C末端に存在するポリグルタミン鎖付近のペプチドを認識するウサギ・ポリクローナル抗体を独自に作製し、患者脳で研究した。その結果、伸長ポリグルタミン鎖を有するC末端部分α1Aカルシウムチャネル蛋白断片(CTF)が、患者脳で凝集することを見出した。この成果は本チャネル蛋白では世界初である。免疫組織化学的にはSCA6患者脳でPurkinje細胞特異的に細胞質内凝集体を認めたなど、SCA6の病態にCTFが重要であることを初めて患者脳で明らかにした。次にこのCTFを認識するモノクローナル抗体を得た。この抗体も確かに患者脳での凝集体を認識した。一方、培養細胞に正常長(Q11, Q13)または伸長(Q22, Q28, Q165)のポリグルタミン鎖を有するCTFを発現させ、培養細胞内にも患者脳内と同様の凝集体を確認することができた。この培養細胞から確かに蛋白の凝集体が産生された。以上の研究から、SCA6の基本病態にCTFの凝集が脳内で関わることが判明した。免疫療法の確立のための初期研究として、培養細胞内での治療標的を作製するとともに、モノクローナル抗体を得ることができた。今後この研究をさらに発展させ、抗体療法の効果を検証し、治療法へ応用することが期待される。
すべて 2008
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Neurosci Lett. 447(1)
ページ: 78-81
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ページ: 11987-11992