研究概要 |
MSA剖検脳における病理学的変化が強調された解剖学的部位を同定するために,既報の方法(Ozawa T, et al. Brain2004;127:2657-2671)を用いて半定量的に病変部を検索した.オリーブ核橋小脳萎縮症 (olivopontocerebellar atrophy=OPC)領域と黒質線状体変性症(striatonigral degeneration=SND)領域についての病変の強さを1〜3グレードで評価した.連続した30例のMSA症例について評価した結果の内訳は,SND1-OPCA3:4例、SND2-OPCA3:11例、SND2-OPCA1:1例、SND3-OPCA2:2例、SND2-OPCA2:1例、SND3-OPCA3:11例であった。OPCAのグレードがSNDよりも高い症例をOPCA type、SNDのグレードがOPCAよりも高い症例をSND type、SNDとOPCAのグレードが等しい症例をSND=OPCA typeとした場合、この30例の病理学的サブタイプの内訳は、OPCA type:15例、SND type:3例、SND=OPCA type:12例であった。今後は計画通り、各剖検脳より抽出したゲノムDNAを用いて、臨床的にMSAと類似性のあるトリプレットリピート病の原因遺伝子を網羅的に検索し,閾値の境界領域あるいは正常範囲で比較的長いトリプレットリピートが,MSAの病理学的強調部位の決定に寄与するかを検討する.具体的には,MSAの病理学的強調部位とSCA遺伝子型頻度の人種差を考慮して,もともと欧米に多いMSA-Pでは、SCA1,SCA2などのリピートが長い傾向にあり、もともと日本に多いMSA-Cでは、MJD/SCA3,SCA6などのリピートが長い傾向にあるかどうかを中心に検討する。
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