研究概要 |
本邦の多系統萎縮症(MSA)症例における病理学的サブグループの内訳を明らかにする目的で,連続した50例のMSA剖検例において,既報の方法(Ozawa T, et al. Brain 2004;127:2657 -2671)を用いて黒質線条体優位型,オリーブ核橋小脳優位型,両病変同等型の分類を行った.検索した50例のMSA剖検例における病理学的サブグループの内訳は,黒質線条体優位型は18%,オリーブ核橋小脳優位型は40%,両病変同等型は42%であった.この結果は,日本人MSAでは臨床的にMSA-Cの頻度が優位であるとする報告を病理組織学的な観点から裏付けるものと考えられる.さらに,黒質線条体優位型の頻度が比較的高い英国人MSAにおける病理学的サブグループの内訳とかなり異なる結果となる結果となった,MSAサブグループの病変分布の特徴において,地域あるいは人種間の差違が存在する可能性がある. また,各病理学的サブグループにおける初発症状の解析結果では.オリーブ核橋小脳優位型では70%が小脳失調を初発症状としており,黒質線条体優位型では55%がパーキンソニズムを初発症状としていた.この結果は,終末像としての黒質線条体優位型病理の予測は,初発症状からは困難であることを示す.
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