研究課題
重症筋無力症(MG)は、骨格筋シナプス後膜側のニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)を標的とした自己免疫疾患として認識されてきた。基本的な考え方は、現在においても変わっていないものの、近年、AChR抗体以外の自己抗体の病態への関与が注目されるようになって来た。AChR抗体陰性のMG患者の中に、muscle-specific tyrosine kinase (MuSK)抗体が一定の割合で見られることは、既に知られているが、AChR抗体陽性MG患者の中に、リアノジン受容体(RyR)抗体を持つ患者がいることも注目されて来た。RyRは骨格筋の興奮収縮連関に関与する重要なタンパクで、その障害は骨格筋収縮に影響を与える可能性が示唆されていた。我々は、胸腺腫合併MGが傍腫瘍症候群であるとの認識の下に、さらに新規の自己抗体が存在する可能性とその病態への関与を明らかにすることを目的として研究を進めた。その結果、RyRの機能を修飾する重要な分子であるジヒドロピリジン受容体(DHPR)に対する自己抗体を胸腺腫合併MG患者の血清から、検出することが出来た。MG患者57名のうち、胸腺腫合併MG患者30名の中で11名(37%)にDHPR抗体が検出された。一方、胸腺腫非合併例、病的対象あるいは正常対照では、本抗体はすべて陰性であった。以上より、MG病態にはAChR抗体の神経筋接合部障害に加え、興奮収縮連関の障害も関与する可能性が示された。ところで、近年、わが国にMG治療薬としても導入されたタクロリムスはRyRの機能を調節するFKBP-12に結合して、その働きを修飾する可能性が示唆されている。RyR抗体、DHPR抗体は筋小胞体からのCa++を阻害する可能性があり、FKBP-12に結合してRyRを開口状態に維持する作用があるタクロリムスは、興奮収縮連関の機能改善に有効である可能性がある。患者の治療計画を立てる上で、これらの自己抗体が有用なバイオ・マーカーとなるものと思われる。
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http://hsc.ad.kanazawa-u.ac.jp/an/