研究概要 |
神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の一部はSOD1遺伝子変異が原因であるが、発症および病変の脊髄選択性の分子機序の詳細は現在なお不明である。SOD1タンパク質は分子内部にジスルフィド(S-S)結合を形成しうるシステイン残基を4ヶ所(6,57,111,146番のアミノ酸)有しており、これらのうち57番と146番のアミノ酸が酸化され相互にS-S結合を形成することでSOD1分子のコンフォメーションを安定させている。我々は本年度の研究において、6番、111番のシステイン残基の酸化が変異SOD1特異的にタンパク質凝集を促進し、高分子凝集体を形成することで神経細胞に毒性を発揮することを見出し報告した(Niwa et a1. J. Biol Chem 282: 28087-95,2007)。ALSモデル動物である変異SOD1トランスジェニックマウスを用いた実験から、変異SOD1タンパク質特異的酸化修飾が病変の存在する脊髄特異的に生じていること、および我々が同定したユビキチンリガーゼであるDorfinが変異SOD1特異的なS-S結合を認識しユビキチン化していることを明らかにした。脊髄運動ニューロンに変異SOD1の病的酸化修飾を促進する因子が存在することが示唆されたため、マススペクトロメトリーを用いたハイスループットプロテオーム解析を用いて変異SOD1特異的に結合するたんぱく質の網羅的解析を行い、変異SOD1特異的に結合する神経細胞にのみ存在する核タンパク質を同定した。
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