研究課題
前年度までに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を引き起こす変異SOD1タンパク質は、分子内の6番、111番のシステイン残基の酸化を介した異常なジスルフィド結合により変異SOD1特異的に高分子凝集体を形成し、神経細胞毒性を発揮していることを明らかにした。また、我々が同定したユビキチンリガーゼDorfinは、変異SOD1特異的なS-S結合を認識しユビキチン化して、変異SOD1の分解を促進することでその毒性を緩和していることを報告した(Niwa et al. J. Biol Chem282:28087-95,2007)。本年度は、我々が作成したDorfinを脊髄に高発現するトランスジェニック(Tg)マウスを変異SOD1-Tgマウスと交配することで、 Dorfinが実際にin vivoで脊髄運動ニューロン内の変異SOD1凝集体を減少させ、変異SOD1-Tgマウスの生存期間を延長し、病理学的にも運動ニューロン障害を軽減しうることを明らかにした。 TDP-43やFUS/TLSなどの核タンパク質の異常が、孤発性および家族性ALSの病態機序に深く関わっていることが近年非常に注目を集めているが、我々は、マススペクトロメトリーを用いたハイスループットプロテオーム解析を用いて、変異SOD1特異的に結合する神経細胞特異的核タンパク質(X)を新たに同定した。Xは核内と細胞質間をシャトルするタンパク質ファミリーの一員であるが、培養神経細胞モデルにおいてXを高発現させることで変異SOD1の毒性を減少させた。今後さらに、 Xの生理的機能や変異SOD1による運動ニューロン選択的な障害発現に果たす役割を研究してゆく必要がある。
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