研究概要 |
孤発性パーキンソン病(PD)の発症には、複数の遺伝子および環境因子が関与すると考えられている。我々は121個の候補遺伝子上の268個のSNPsを用いた大規模な関連解析により、α-synuclein(P=5.1×10^<-14>,OR=2.23)を確実なパーキンソン病(PD)感受性遺伝子として同定し、報告した。また、白人でPDとの関連が報告されていたFGF20(P=0.0053,OR=1.24)の日本人での再現性も確認した。今回、新たなPD遺伝子同定のために、さらに候補遺伝子を増やして合計137個の候補遺伝子上の302個のSNPsの関連解析を行った。遺伝子型タイピングは患者1403人、対照1938人を対象にTaqMan法で行った。 その結果、新たなPD遺伝子calbindin1を同定した(P=7.1×10^<-5>,OR=1.34)。さらに、α-synuclein,calbindin1,FGF20の3個のPD遺伝子のうち、最も強くPDと関連するα-synucleinを中心にして、統計学的組み合わせ解析を行った。calbindin1はα-synucleinのリスクを持たない群でPDと強く相関し(OR=1.70)、逆にFGF20はα-synucleinのリスクアレルを持つ群でPDとより強く関連した(OR=1.76)。 Calbindin1はカルシウム結合蛋白であり、PD患者の黒質でcalbindin1陰性神経の脱落が陽性神経の脱落よりも強いことから、神経保護作用を持つと考えられている。組み合わせ解析から、calbindin1はα-synucleinとは独立に、一方、FGF20はα-synucleinと相乗的に、PD発症に関与していることが示唆される。
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