研究課題
本研究の目的は、in vitroの系を用いてグリア細胞からのシグナルが運動ニューロンの構造タンパクに与える影響を、明らかにすることである。実験材料として変異SOD1 (G93A) を導入したトランスジェニックマウス(筋萎縮性側索硬化症モデルマウス)およびコントロールマウスを用いた。生後1-2日のマウス脊髄を取り出し、トリプシン処理し細胞を培養、振とう培養を行い、混入したミクログリアが除去されたアストロサイトの初代培養細胞を得た。別にHb9プロモーターの下でGFPを発現させたトランスジェニックマウスの胚性幹細胞からレチノイン酸およびソーニックヘッジホッグを用いて運動ニューロンを分化誘導した。この胚性幹細胞由来運動ニューロンをALSモデルおよびコントロールマウスのアストロサイト上で共培養し、アストロサイトが運動ニューロンに及ぼす影響を観察した。その結果、変異SOD1を発現したアストロサイト上の運動ニューロンは生存率がコントロールと比較して低下しており、また残存した運動ニューロンの細胞体の面積が小さく、伸長した軸索の長さが短いことがわかり、細胞毒性を持つと考えられた。この細胞毒性が液性因子によるものかを明らかにするためにそれぞれのアストロサイトの培養液を集め、その中で胚性幹細胞由来運動ニューロンのみを培養したところやはり神経細胞の生存率の低下が認められた。原因物質は同定できていないが、Bax inhibitorであるV5を培養液に加えることで生存率の低下を抑制でき、機序としてBaxの存在が示唆された。
すべて 2007
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