研究概要 |
本年度は,カプサイシンに感受性をもつTRPV1 receptor(transient receptor potential vanilloid sub-family member 1)の存在について検討した.三叉神経血管説では神経原性炎症という無菌的な炎症が脳硬膜におこり片頭痛が生じていると考えられている.本研究では,これらのプロトン受容体の中でTRPV1受容体の三叉神経血管系での局在と分布および起源について抗体を利用して免疫組織化学により検討した.Sprague-Dawley種ラットを用い,深麻酔下に氷冷ピクリン酸添加パラホルムアルデヒド溶液(Zanboni液)により灌流固定後,脳硬膜,三叉神経節,翼口蓋神経節,耳神経節,内頸神経節,上部頸髄神経(C_<2-3>)および後根神経節を摘出し,螢光抗体法により受容体の局在と分布を光学顕微鏡で検討した.この結果,脳硬膜にTRPV1受容体陽性の神経線維を認めた.また,三叉神経節および後根神経節にTRPV1受容体陽性の神経細胞を認めた.さらに,脳硬膜のTRPV1受容体陽性神経線維の起源を調べるため深麻酔下に逆行性神経軸索トレーサーであるTrue Blue Chloride(Molecular Probes)を中硬膜動脈付近の硬膜へのapplicationを行った.2週間後に灌流固定し三叉神経節および後根神経節を摘出し螢光抗体法により受容体の局在と分布を光学顕微鏡で検討した.TBの集積は三叉神経節および少数の後根神経節の神経細胞に認められた.三叉神経節について行った定量的解析ではTB集積細胞の約50%がTRPV1陽性でさらにこれらの内80%の細胞がCGRPと共存しており片頭痛におけるTRPV1受容体の役割を考える上で重要な知見と考えられた.
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