研究概要 |
昨年度より引き続きTRPV1受容体を介する三叉神経血管系での疼痛刺激の伝達機序について,抗体を利用してWestern blottingにより検討した.実験にはSprague-Dawley種ラットを用いた.ラットをペントバルビタール麻酔下に脳固定装置に固定し,頭部皮膚正中切開にて頭蓋骨を露出し歯科用ドリルにて頭頂部に頭窓を作成した.ASIC受容体の刺激として脳硬膜を露出して外頚動脈の枝である中硬膜動脈の灌流領域を酸性のpHのbufferで灌流した.TRPV1受容体の刺激として脳硬膜をcapsaicinで刺激した.刺激から三叉神経節摘出までの時間をそれぞれ与1分,3分,5分と設定し,MAPキナーゼ(p38,ERK)のリン酸化の程度を三叉神経節,脳幹三叉神経脊髄路核において比較検討した.この実験により,昨年度は,三叉神経節において,MAPキナーゼのなかのERKのリン酸化が刺激1分および3分後に認められた.今年度は,三叉神経節におけるERKリン酸化が,TRPV1受容体アンタゴニスト,およびERKリン酸化を抑制するMEK inhibitorであるPD98059およびU0126で抑制されるかを検討した.これらの薬剤を頭部皮膚正中切開にて頭蓋骨を露出し歯科用ドリルにて頭頂部に頭窓を作成した頭窓に30分前投与をしたあと,capsaicinでTRPV1受容体を刺激し3分間後に三叉神経節を摘出した.この結果,ERKリン酸化がコントロールと比べ減弱していた.以上より脳硬膜capsaicin刺激により三叉神経節でみられるERKリン酸化はTRPV1受容体からMAPキナーゼの経路を介することを明らかにした.本研究は,脳硬膜のTRPV1受容体を刺激した結果,疼痛の指標としてMAPキナーゼリン酸化を捕らえており,疼痛モデルとして有用である可能性が考えられた.
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