19年度の予定は抗ALS及び抗アルツハイマー活性を有する神経保護因子コリベリン(ADNF-HN誘導体)のターゲット分子の探索および、コリベリンの高活性のメカニズム解明を目指して、コリベリン構成成分であるADNF、AGAC8R-HNG17のキャラクタライゼーションを実施する事であった。予定通りコリベリンのターゲット分子の探索から始めた。コリベリンはヒューマニン(HN)の誘導体であるため、HNの受容体をターゲット分子として結合しそのシグナル経路を有するかどうかを検討した。FPRL1は7回膜貫通型受容体でアミロイドベータ(Abeta)受容体として知られており、最近HNの受容体としても報告された。またFPRL1はリガンドの結合により、下流のMAPキナーゼ、Erkが活性化されることが報告されているため、HN誘導体でErkがリン酸化されるかを検討したところ、Erkリン酸化がみられた。HN誘導体を有するコリベリンも同様の結果が得られるか検討中である。予備実験の階段ではあるが、Erkを活性化するという結果が得られている。コリベリンの活性が構成分子のHN誘導体より約100倍上昇することの機序を説明するため、コリベリンの2量体化を仮定し、HN誘導体部分の2量体化をADNF部分が2量体化することにより強化するという事を考えていた。これを確認するため、CD(円偏光2色性)、及び、分析用超遠心機により探索したところ、ADNFもAGAC8R-HNG17もコリベリンも予想に反しモノマーであった。更に他のHN誘導体HNG、HNもモノマーの様である(予備実験)。 よって、今までの間接的な方法で得た結果のHN誘導体の2量体化説も本キャラクタライゼーションからの結果では否定され、ADNF、コリベリンのフェムトモル濃度で発揮される高活性のメカニズムは新たな疑問となり、今後の課題となった。しかし、真のメカニズム解明に向けての、また創薬を考える上での新しい重要な情報を得ることができた。
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