本研究の20年度の予定は19年度から引き続き、1)コリベリン及び、ADNFのターゲット分子を探索すること、2)それ等のキャラクタライゼーションを終了させ、ADNF-EPOM(EPOミメティクス)のキャラクタライゼーションを実施することである。ターゲット分子(受容体)探索は困難であるが進行中である。コリベリン及びその構成成分である、ADNF(神経細胞死をfMレペルで抑制する活性を有する)とAGAC8R-HNG17 (HN最強誘導体)はその活性の高さから「2量体化仮説」を考えていた。しかし、ADNF、 AGAC8R-HNG17はモノマーであることがキャラクタライゼーション[CD(円偏光二色性)及び分析用超遠心機]の結果判明した。意外な結果であった為、HN誘導体にも遡って2量体を確認することにした。予備実験のとおり、HNG、 HNはモノマーであったが、更に確認の為ダイマー能欠損HNとされているS7A-HNで、上記の実験を行ったところ、全くHNと同様に、モノマーという結果であった。また、ADNFをN末端に融合させる事で、HN誘導体の活性をADNFのレベルまで上昇させることから、他のペプチドでも確認するべく、EPOMを考えたが、EPOMは種類も多く、それぞれのキャラクタライゼーションに時間を要するので、代わりにより短いペプチドで、活性がADNFと同様のfMレベルで神経保護作用を発揮するa) NAPというペプチド(7アミノ酸残基)を考え、b) ADNF-NAP、更にC末端にADNFを融合させたc) NAP-ADNFという3種のペプチドを合成し、キャラクタライゼーションを進行させている。予備実験の結果ではあるが、NAPそのものはモノマーのようである。NAPはEPOミメティクスとは違い、グリア培養上清液から精製されたペプチドの一部であり、すでに生物学的な情報は報告されていて、有益である。
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