α-ジストログリカノパチーの原因蛋白質の-つであるLargeはα-ジストログリカンの糖鎖を修飾することによりα-ジストログリカン(α-DG)のラミニン結合能を飛躍的に亢進させることが知られている。そしてLargeのこの作用にはLargeがα-DGのN末端ドメイン(α-DG-N)に結合することが必要であること、また、最終的にはα-DG-Nはプロプロテインコンバターゼにより切断されることが明らかにされている。本年度の研究ではLargeによるα-DGの糖鎖修飾の機序を明らかにするために、まずα-DG-Nのプロセッシングに関する検討を行った。その結果C2C12、HEK293、COS、HeLa、MCF7、DU145などの各種培養細胞系において、1)α-DG-Nは培養上清中に分泌されていること、2)プロプロテインコンバターゼ阻害剤であるCMKによりこの分泌が抑制されること、3)このα-DG-Nの切断はα-DGのラミニン結合能には影響を及ぼさないこと、4)α-DG-NはN-結合型糖鎖、0-結合型糖鎖、両者の糖鎖付加を受けていること、5)α-DG-Nは微量ながらヒトの血清中にも存在すること、などを明らかにした。また、Largeを用いた酵素補充療法の開発を目指して、本年度はLargeのリコンビナント蛋白質の作製を試みた。バキュロウイルスを用いた昆虫細胞への遺伝子導入とプラスミドベクターによる哺乳類培養細胞への遺伝子導入を平行して行った。現在までに培養上清中に分泌型のLargeが発現されることをウエスタンブロットで確認しているが、酵素補充療法に必要な量を確保するためには発現、精製効率を高め、スケールアップを図る必要がある。さらに本年度はLargeのトランスジェニックマウスの作製に着手しておりこの2月にはFounder mouseが誕生した。
|