本年度においては、CIDP患者の電気生理学的評価の基本的手技として有用な神経伝導検査(NCS)における、複合筋活動電位(CMAP)の起源を解明する研究(園生)が論文掲載された。この研究により、従来は単純に筋の活動電位とされていたCMAPに遠隔電場電位が関与していることが明確になり、CIDPを含むニューロパチーに対するNCSの臨床応用においても、より正確さが増すことが期待される。また、従来針筋電図によってしか不可能だった、神経原性か筋原性かの判定を、表面筋電図によって行うClustering Index(CI)法を筆者らは開発したが、これを尺骨神経支配の小指外転筋において行い、神経原性である球脊髄性筋萎縮症の診断に極めて有用であることを示した論文が採択された(研究協力者東原)。これは同じ神経原性疾患であるCIDPの診断にも役立つことが期待される。その他の電気診断に関する研究として、尺骨神経刺激感覚神経伝導検査における、背側皮枝への刺激の波及についての研究(研究協力者村嶋)、筋萎縮性側索硬化症での反復刺激試験に関する研究(研究協力者岩波)、筋萎縮性側索硬化症の線維束自発電位に関する研究(研究協力者東原)、封入体筋炎の針筋電図所見に関する研究(研究協力者北國)などが投稿中である。また、CIDPにおけるSEP所見についての研究を直接発展させるものとして、感覚性Guillain-Barre症候群の脛骨神経SEPによる診断についての研究(研究協力者黒野)、感覚性CIDPにおけるSEP所見についての研究(研究協力者大石)が投稿準備中である。また、上記、尺骨神経刺激感覚神経伝導検査に関する研究、筋萎縮性側索硬化症での反復刺激試験に関する研究、神経伝導検査での痛みに関する研究(研究協力者田村)などについて、カナダ、ケベックで開かれた、アメリカ神経筋電気診断学会において研究成果を発表した。
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