研究概要 |
HTLV-I関連脊髄症(HAM)は、HTLV-1感染細胞に起因した過剰な免疫応答がその主病態である。その感染T細胞において病態形成に最も重要なT細胞サブセットを同定することは、治療標的細胞・分子を明らかにするために重要であるが、これまでそのアプローチがなされていない。従って、HAM患者における治療標的細胞・分子を明らかにするために、本研究ではHTLV-1感染細胞に着目して解析を行った。 まず、HTLV-I感染細胞のマーカーとして、CD4+CD25+CCR4+T細胞が有用であることを証明した。CD4+CD25+CCR4+T細胞は、健常者では制御性T細胞(Treg)やTh2細胞がその主な構成細胞であるが、HAM患者のCD4+CD25+CCR4+T細胞におけるTregのマーカー分子であるFoxP3、CTLA-4や、CD28などの発現量を解析したところ、HAM患者においてFoxp3の発現が低い(FoxP3^<low>) non-Treg細胞、つまりCD4+CD25+CCR4+FoxP3^<low>T細胞が異常に増加していることが判明した。次に、その細胞における炎症性サイトカイン(IFN-γ, IL-2, IL-17)の発現について検討したところ、HAM患者ではIFN-γの発現が異常に亢進していた。そこでIFN-γ産生性CD4+CD25+CCR4+FoxP3^<low>T細胞の頻度を測定したところ、HAM特異的に異常に増加しており、重要なことに、その頻度は臨床重症度と有意に相関していた。 これらの結果は、本細胞がHAMの病態である“過剰な免疫応答"の主な原因細胞、つまり治療標的細胞の最重要候補であることを示唆している。これらの成果は学会で報告され、また特許も2件出願している。このように、本研究においてHAMにおける病因的細胞を同定しており、現在、その細胞を利用して治療標的分子に関する詳細な解析を進めている。
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