本年度は交付申請時の予定通りに、多発性硬化症(MS)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対して治療効果を有する抗血小板薬を見出すことに成功した。B6マウスにMOGペプチドで誘導したEAEに対して、アスピリンやCilostazolなどの抗血小板薬を1%含有するエサ、あるいはコントロールとして通常エサを与えて症状を評価した。その結果、Cilostazol含有エサ投与群は、他の抗血小板薬投与群と比較してEAE症状が最も軽症であり、通常エサ投与群と比較してEAE症状は有意に抑制された。EAE発症後に投与を開始した場合は、効果は得られるものの、統計学的有意差はなかった。EAE誘導後11日目のリンパ球をin vitroにてMOGで再刺激し、細胞増殖友応や培養上清のサイトカインを測定したところ、Cilostazol投与群ではMOG反応性T細胞の増殖反応やIFNγ産生が有意に低下していた。つまり免疫学的バランスのTh1を抑制する方向に作用していた。また、血清中可溶性接着分子をELISAにて測定したところ、EAE症状発症時期にて、ICAM-1とp-selectinが有意に低下していた。接着分子はEAEにおいて、活性化リンパ球の脳血液関門通過に重要である。これらの結果から、cilostazo1はEAEにおけるinduction phaseにおいて治療効果を発揮していることが明らかになった。さらなる詳細な機序について、次年度に明らかにする予定である。
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