研究概要 |
われわれは,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALS疾患の進行はミクログリアに由来する変異SOD1毒性により加速されることを見いだしてきた.本研究計画では,その成果に立脚して変異SOD1マウスの疾患進行期の脊髄病巣のミクログリアおよびアストロサイトで異常発現している分子の検出を目指している.解析の手法として,DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析を行っている.本年度は,SOD1^<G37R>,SOD1<G85R>,SOD1^<WT>,B6コントロールのマウス脊髄試料を用いて解析を行い,ミクログリアおよびアストロサイトにおける異常発現分子を検出し,そのリストを作成した.Preliminaryの段階であるが,いくつかの遺伝子に関しては,その病態への関与をさらに検討するために,定量性PCRや脊髄における抗体染色などを用いて遺伝子発現の確認作業を行っている. さらに,我々が作成した変異SOD1マウスモデルにおいて,アストロサイトにおける変異SOD1毒性を除去することにより,ALSの発症時期ではなく進行速度が著明に遅延すること,さらにアストロサイトにおける変異SOD1毒性がミクログリアの活性化を増強させていることを見いだし,論文発表を行った(研究発表参照).ALSにおいて,ミクログリアとアストロサイトの両方のグリア細胞における病的変化が疾患の進行を規定していること,またこれらのグリア細胞の相互作用が疾患の進行に貢献していることを解明した研究成果は,現在進行中の本研究の重要性を支持するものである.
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