研究概要 |
われわれは,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALS疾患の進行はミクログリアに由来する変異SOD1毒性により加速されることを見いだしてきた.本研究計画では,その成果に立脚して変異SOD1マウスの疾患進行期の脊髄病巣のミクログリアおよびアストロサイトで異常発現している分子の検出を目指している.本年度は,SOD1^<G37R>,SOD1^<G85R>,SOD1^<WT>,B6対照のマウス脊髄試料を用いてDNAマイクロアレイによる解析を行い,疾患進行期の2種のALSモデルマウスに共通する約300の異常発現遺伝子を同定した.細胞群特異的なトランスクリプトームを用いた解析によりそのうち約50%がミクログリアに主に発現する遺伝子であることが判明した.現在,候補遺伝子の一つでミクログリアの遊走や病巣への浸潤に関与する遺伝子の役割についてALSマウスを用いた交配実験で検討を行っている.さらに,運動ニューロンとoligodendrocyteに変異SOD1を発現し,他の細胞群は野生型とのキメラとなる新規キメラマウスを作成し,運動神経変性の発症および進行が著しく遅延することを証明し,ALSマウスモデルにおける運動神経変性は非細胞自律性に起こることを証明し,論文発表を行った.運動ニューロン以外の細胞が非細胞自律性に運動神経変性に貢献していることを解明した研究成果は,現在進行中の本研究の重要性を支持するものである.
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