研究概要 |
神経変性疾患に共通してみられる病理学的特徴は、封入体形成と神経細胞死の2点である。すなわち、パーキンソン病ではLewy小体と呼ばれる神経細胞内封入体が形成され、主としてドパミンニューロンが選択的に細胞死に陥る。本研究では、この両者にどのような関連があるのかを明らかにすることを目的としている。これまでの研究ではαシヌクレインとよばれる凝集しやすい低分子タンパクが細胞質内で凝集することが細胞死を引き起こす要因として注目されてきた。しかし、私たちは、凝集体を形成した場合には神経細胞死がむしろ回避されることを報告してきた。そこで、「見えない形での凝集形成」が細胞死にどのような影響があるかに着目し、二量体、三量体などのオリゴマー形成が生じているかについて重点的に解明することが重要と考えた。ヒトニューロブラストーマであるSH-SY5Y細胞にαシヌクレインを過剰発現させた系を用いてアグレソーム形成を促進するため、プロテアソームを阻害した条件で実験を行った。回収した細胞の細胞質分画をゲルろ過し、分子量に応じて分取した。その結果、単量体、二量体、三量体の分取が可能となった。これまで、αシヌクレインのオリゴマーへの重合は、細胞外での検討では証明されていたが、細胞内でオリゴマー形成が確認され、また、これが分取可能となった意義は大きい。また、細胞なカテコラミン濃度がαシヌクレインの重合形成に与える影響についても検討を開始した。近年、ドパミン受容体刺激薬による神経保護作用が注目されているが、私たちは、ドパミンアゴニストにより細胞内ドパミン含有量が低下することが神経細胞保護につながっていることを見いだし、報告した(Izumi, et. al. E. J. Pharmacol. 582: 52-61, 2008)。
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