研究概要 |
動脈硬化巣における中膜より内膜へSMCsが遊走,増殖する過程で,病的形質の制御遺伝子として遊離型分化抑制因子LR11の発現が重要であり,この欠損モデル動物を用いた血管機能を解析することが,病巣内でのSMCsの分化,脱分化の機序を明らかにする。本研究の目的は,LR11ノックアウト動物の血管細胞の機能解析により病巣形成における内膜SMCsの形質変換機構を解明し,分泌可溶化LR11を用いた内膜SMCsの病的形質変換の修飾を探索することである。 1)LR11ノックアウトマウスの動脈壁SMCsの機能解析 LR11ノックアウトマウス血管壁SMCsの細胞骨格の変化を組織免疫学解析により評価した。培養LR11^<-/->SMCsのミオシンアイソフォーム蛋白はLR11^<÷/÷>SMCsに比べて幼弱型ミオシンが減弱し成熟型アイソフォームが増大した。LR11^<-/->SMCは,PDGF-BBやアンギオテンシン(Ang)IIによるアクチン再構成が傷害されるとともにこれらのサイトカインによる細胞運動能および遊走能が減弱した。とりわけAngII刺激によるアクチン再構成変化はほぼ消失した。 2)リコンビナント放出可溶型LR11の作成 ヒト型およびマウス型LR11全長cDNAを用いて,プロテアーゼ(TNF-a converting enzyme,TCE)感受性部位より細胞外領域のみ有するリコンビナント蛋白に対応する部分cDNAを作成し,cDNAを大腸菌にて大量発現させGST精製によるリコンビナント放出可溶型LR11蛋白の精製に成功した。本リコンビナント蛋白が,SMCsのuPARと特異的に結合しインテグリン/FAKシグナルの活性化を引き起こすことを明らかにした。 本研究成果は交付申請書に計画したほぼ100%の研究成果であり,LR11ノックアウトSMCsにおける内膜SMCsの形質変換機構が傷害されることが明らかになった。リコンビナント可溶化LR11を用いた内膜SMCsの病的形質変換機構を継続する。
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