腹部手術により得られた約80症例の腹部生検皮下脂肪組織および大網脂肪組織を用いて、皮下脂肪および内臓脂肪組織におけるアディポネクチン、レプチン、IL-6などのアディポサイトカイン遺伝子発現を定量的RT-PCR法にて定量し、皮下脂肪あるいは内臓脂肪組織のアディポサイトカイン遺伝子発現のいずれが、その血中濃度を規定しているか、さらにBMIや腹囲がアディポサイトカイン遺伝子発現に影響するか否かについても検討した。その結果、皮下脂肪組織におけるアディポネクチン発現が血中濃度に正相関し、BMIや腹囲と負の相関を示した。一方、内臓脂肪組織におけるレプチン発現が血中濃度およびBMIや腹囲と正相関すること、また、内臓脂肪組織におけるIL-6発現がその血中濃度と相関した。このように、アディポサイトカインによりその発現が皮下脂肪および内臓脂肪組織において異なることが示唆された。また、我々が報告した2型糖尿病とその遺伝子座が相関した転写因子TFAP2Bの脂肪組織における発現とアディポサイトカイン発現を検討したところ、TFAP2B発現は、アディポネクチン、レプチン発現と逆相関し、一方、IL6発現とは正相関することを見出した。我々は、3T3L1脂肪細胞を用いて、TFAP2Bのアディポネクチン、レプチン、IL-6の遺伝子プロモーターに対する影響を直接検討したところ、in vivoにおける成績と一致し、TFAP2Bは、アディポネクチンおよびレプチン遺伝子プロモーター活性を抑制し、一方、IL-6遺伝子プロモーター活性を増強した。
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