我々は、肥満2型糖尿病とその遺伝子座が相関する転写因子AP-2βを同定し、それが脂肪組織に特異的に発現すること、疾患感受性アリルを有する人では脂肪組織でのAP-2β発現量が増加していること、AP-2βの過剰発現により脂肪細胞が大型化すること、さらに、in vitroにおいて、AP-2βは、アディポネクチン発現を負に、レプチン発現およびIL-6発現を正に制御することを報告した。本研究では、生検皮下脂肪組織および内臓脂肪組織を用いて、アディポネクチン、レプチン、IL-6発現量と、その血中濃度、BMIとの関係、およびAP-2β発現量との相関を検討した。その結果、BMIは血中アディポネクチン濃度と負に相関、レプチン濃度とは正相関した。皮下脂肪組織におけるアディポネクチン発現はBMIと負に相関した。一方、内臓脂肪におけるレプチン発現は、血中濃度およびBMIと正相関した。一方、IL-6発現は皮下脂肪、内臓脂肪ともBMIとは相関しなかったが、内臓脂肪におけるIL-6発現は血中濃度と相関した。以上より、アディポサイトカインにより、その発現や血中濃度における寄与が、皮下脂肪組織と内臓脂肪組織において異なることが示唆された。さらに、AP-2βの発現量とアディポネクチン発現量とは負に相関し、レプチンおよびIL-6発現量とは正相関した。これらの結果はこれまでの我々のin vitroでの結果と一致しており、AP-2βが脂肪組織におけるアディポサイトカイン発現を制御している可能性が示唆された。
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