京都大学医学部附属病院、協力医療機関および国内外の医療・研究機関からの解析委託を受け、本年度は新生児糖尿病患者計8症例に関して検討。KATPチャネルを構成するKir6.2およびSUR1サブユニット上の未報告部位を含む遺伝子変異に関して、ATP感受性および経口血糖降下薬スルホニル尿素(SU)薬に対する感受性を評価。なかでも協力医療機関から解析委託を受けた症例に関して、in vitroで発現させた変異KATPチャネルに対する現在臨床使用可能な複数のSU薬の薬剤感受性を電気生理学的手法(パッチクランプ法)を用いて並列評価した結果、薬剤間で薬効変化に差異を認め、同遺伝子変異に関して、ある特定のSU薬はほとんど薬効低下が起こらず、野生型KATPチャネルと同程度の薬効が見込めることを見いだした。実際に解析依頼元の協力医療機関においてSU薬を用いた治療が行われ、in vitro評価で薬効が保たれていた特定のSU薬により著明な血糖改善を認めた。本症例は、本薬剤著効により、これまでの強化インスリン療法から離脱でき、経口薬での血糖管理が可能となった。これまでの新生児糖尿病は、生涯、インスリン治療が必須とされてきたが、これらの結果は、同遺伝子異常を有する患者に対する経口薬での治療の可能性を提供するのみならず、経口治療薬薬剤反応性変化を事前のin vitro機能解析で評価することが実際に可能であることを示すものであり、本申請研究の大きな目標である、薬剤処方前in vitro評価に基づいた治療薬選択論拠の提示が可能であること意味する。本成果は臨床的にも大きな可能性を開く成果であると考えられる。
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