本邦の2型糖尿病はインスリン分泌低下を主たる障害とするため、インスリン分泌能の改善を主眼にした予防・治療法の確立が期待される。我々はこれまで、近交系脂肪肝モデルマウスFatty Liver Shionogi(FLS)マウス耐糖能が6ヶ月齢までは経時的に悪化するがそれ以降はむしろ耐糖能改善(寛解)することを見出し、本動物が2型糖尿病寛解モデルとして有用であることを示してきた。本年度は糖尿病合併脂肪肝のモデル動物FLSとそのコントロール系統C57/BL6の雄マウス用いて以下の点につき明らかにしてきた。 (1)FLSマウスでは6ヶ月齢より12ヶ月齢にむけて基礎ならびに追加インスリン分泌が増加し、この代償的分泌亢進によって耐糖能が改善すること、(2)FLSマススでは6ヶ月齢に比し12ヶ月齢で膵ラ氏島数の増加とサイズの増大がみられるがこの増大には膵β細胞数の増加が関与することを明らかにした。さらに(3)膵β細胞数の増加に関与が報告される候補遺伝子Insulinreceptor2遺伝子ならびにGlucokinase遺伝子の膵ラ氏島での発現をRT-PCR法により検討したところ、その発現レベルは亢進していないことを見出した。 したがって、本モデル動物における糖尿病の自然寛解には膵β細胞増加による代償性インスリン分泌の元進が重要であるが、この細胞数増加の基盤に既知の生物学的経路とは独立した機序が関与することが明らかとなった。今後、FLSマウスの膵ラ氏島で発現量の変化が示唆された遺伝子群の検討を進め、膵ラ氏島過形成に関与する新たなる分子機構の解明を行うことにより、糖尿病自然寛解にむけての治療法の開発に結び付くことが期待される。
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