研究概要 |
[目的および方法]胎児期飢餓ストレスによる低体重出生が膵β細胞に与える影響を検討した。妊娠したC57BL6Jマウスを用いて、妊娠後期から70%の食餌制限を行い、出生後のマウスの個体の表現型および膵β細胞量を解析した。[結果]妊娠後期に低栄養状態にした母から生まれた低体重出生マウスの膵臓では、対照群(非食事制限母からの出産)と比較して膵β細胞量な著明な減少を認めた(膵β細胞量(膵単位面積当たり):1.40±0.13vs0.51±0.20%,P<0.05)。低体重出生マウスは出生直後からcatch-up growthとみられる体重増加を認め、生後2週齢で対照群に比し体重の有意な増加を認めた。しかし、膵β細胞量は4週齢においても依然として対照群より有意な減少を示した(膵β細胞量:0.62±0.07vs0.39±0.05%,P<0.05)。生後4週齢以降、HFD群においても随時血糖値は両群間で有意な差を認めなかったが、随時インスリン値は実験群で高値を示しインスリン抵抗性の存在が示唆された。12週齢の糖負荷検査では実験群で軽度の耐糖能異常を呈した。同週齢での膵β細胞量は対照群よりもむしろ増大しており(膵β細胞量:0.27±0.04vs0.59±0.08%,P<0.05)、HFD負荷による末梢のインスリン抵抗性に対する膵β細胞の代償性肥大が対照群よりも早期に生じていると考えられた。20週齢になると実験群の随時インスリン値は対照群よりむしろ低値を示すようになる。膵β細胞の疲弊が早期に生じている可能性が示唆された。[結論]低体重出生マウスでは膵β細胞の発育が不十分で予備能が小さいため成熟後の肥満等のインスリン抵抗性のもとでは容易に膵β細胞不全を生じ、耐糖能異常をきたしやすいと考えられる。
|