成長ホルモン分泌促進作用や摂食促進作用を持つグレリンと同一遺伝子にコードされている新規ペプチドオベスタチンのヒトにおける摂食に対する作用を明らかにすることを試みた。やせ、正常体重、肥満の健常人ボランティア101名を対象にして、身長、体重、体組成の計測とともに、早朝空腹時に採血を行い、血糖値、血清インスリン値、血漿グレリン値、血漿デスアシルグレリン値、血漿オベスタチン値を測定した。また、正常体重の16名にラコール(1kcal/ml、炭水化物62.5%、蛋自質17.5%、脂質20%)を早朝空腹時に450kcal摂取させ、30分おきに120分後まで経時的に採血を行い、上記の各値を測定した。グレリンとデスアシルグレリンはbody mass index (BMI)およびインスリン値と有意な負の相関を示したが、オベスタチンはBMIおよびインスリン値と有意な正の相関を示した。オベスタチンとグレリンまたはデスアシルグレリンは有意な負の相関を示した。ラコール負荷試験においては、グレリンとデスアシルグレリンは負荷後に有意に低下したが、オベスタチンは負荷後も基礎値から有意な変化を認めなかった。以上の結果から、オベスタチンはヒトにおいては急性の摂食抑制作用を持たないことが示唆された。しかし、長期のエネルギーバランスやインスリン分泌・インスリン抵抗性に関しては、オベスタチンはグレリンとは相反する作用を持つ可能性が示唆された。オベスタチンの齧歯類における摂食抑制作用はいまだに結論は出ていないが、ヒトでの生理作用の一端を明らかにできた。次年度は肥満の病態におけるオベスタチンの意義について明らかにしていきたい。
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