研究概要 |
HDL新生反応による炎症反応制御ならびに抗動脈硬化作用解析のため、主として各種培養細胞を用いた実験を行い、以下の成果を得た。 1 α1アドレナリンレセプター阻害薬doxazosinは降圧剤として用いられているが、投与群ではHDL上昇のあることが報告されていた。培養細胞からのHDL新生反応を測定できる系を用い、doxazosinがABCA1遺伝子の転写を活性化することでABCA1タンパク質レベルを上昇させ、細胞からのアポリポタンパク質依存性コレステロール放出を促進することを明らかにした。 2 上記1の現象の分子生物学的メカニズムを明らかにすることを目的として、ヒトならびにマウスABCA1プロモーター領域の解析を行い、転写制御因子AP2αがABCA1遺伝子を負に制御していること、doxazosinはAP2αのリン酸化レベル低下を介してAP2αによるABCA1遺伝子の転写抑制を解除することを証明した。 3 ABCA1ノックアウトマウスとLPS投与による急性炎症モデルを用いたin vivo, ex vivo, in vitro実験により、急性炎症時の肝SAA mRNAの誘導と細胞外へのSAAタンパク質放出はABCA1の遺伝子型にかかわらず行われるが、SAAのHDL粒子への組み込みと血中SAA濃度上昇にはABCA1遺伝子産物が必要であることを示した。
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