HDL新生反応による炎症反応制御ならびに抗動脈硬化作用解析のため、各種培養細胞および遺伝子改変マウスを用いた実験を行い、以下の成果を得た。 1α1アドレナリンレセプター阻害薬doxazosinは降圧剤として用いられているが、投与群ではHDL上昇のあることが報告されていた。培養細胞からのHDL新生反応を測定できる系を用い、doxazosinがABCA1遺伝子の転写を活性化することでABCA1タンパク質レベルを上昇させ、細胞からのアポリポタンパク質依存性コレステロール放出を促進することを2007年に見いだしている。この現象の分子生物学的メカニズムはdoxazosinがAP2αのリン酸化レベル低下を介してAP2αによるABCA1遺伝子の転写抑制を解除することであるが、このABCA1発現抑制に直接関与するAP2αのリン酸化部位はSer258であり、リン酸化酵素はprotein kinase Dであることを明らかにした。 2ABCA1ノックアウトマウス由来線維芽細胞のcell lineを樹立し、細胞の不死化や増殖速度はABCA1遺伝子型に無関係であること等を明らかにした。 3ABCA1ノックアウトマウスの炎症刺激に対する反応を野生型マウスの場合と比較し、ABCA1ノックアウトマウスでは慢性炎症刺激に対しても肝SAA mRNAの誘導はSAA-HDL産生に結びつかないこと、アミロイドーシス発症頻度が野生型マウスと異なること等を見いだした。
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