2型糖尿病の発症には遺伝素因が深く関係しているが、最近、欧米人において転写因子に属するtranscription faetor 7-like 2(TCF7L2)遺伝子の多型(rs7903146およびrs12255372)が2型糖尿病の発症に関係することが報告され注目されている。本研究では、まず、日本人2型糖尿病患者(384名)および非糖尿病コントロール(378名)を対象に2つのSNPの頻度の比較を行った。その結果、rs7903146のリスクアリルは糖尿病患者で有意に高頻度(odds ratio 1.97、95%CI 1.14-3.41、p=0.014)であり、rs12255372に関しても同様の傾向(p=0.055)を認めた。一方、リスクアリル頻度は、各々、5.1%および4.3%で欧米人での報告の6分の1程度と低頻度であり、TCF7L2遺伝子の多型は日本人2型糖尿病の発症に関連するもその寄与度は欧米人に比し低いと考えられた。次に、経静脈的グルカゴン刺激に対するインスリン分泌反応とTCF7L2遺伝子多型との関連の検討を行った。その結果、rs7903146およびrs12255372に関して、どちらのSNPもリスクアリルを有する糖尿病患者は有さないものに比し負荷後5分の血清C-peptideの増加量は有意(各々、p=0.033およびp=0.012)に低値であった。グルカゴンは、膵β細胞においてGLP-1受容体およびグルカゴン受容体を介してインスリン分泌を刺激すると考えられている。さらに、グルカゴン刺激に対するインスリン分泌反応は残存膵β細胞量と比例するとの報告もあり、TCF7L2遺伝子がGLP-1受容体やグルカゴン受容体を介するインスリン分泌機構や膵β細胞量の調節機構に関係する可能性が示唆された。
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