乳癌の治療法として近年著しく進歩した、新規内分泌療法を子宮内膜癌の治療や再発予防に適応する可能性を探るとともに、乳癌のホルモン療法の効果をより高める手立てを探索することを目的に、乳癌と子宮体癌の癌周辺微小環境も含めた生物学的特性を特に両者の差異に着目して解析した。昨年度の研究により、子宮癌細胞のエストロゲン応答性遺伝子の発現プロファイルは乳癌のそれとは大きく異なることがわかったので、子宮癌組織を用いて網羅的マイクロアレイを行い、正常子宮内膜に比べて癌に特徴的な遺伝子のひとつとしてミッドカインが挙げられた。子宮内膜におけるその発現は子宮癌の病態と関連が見られた(Tanabe et.al. Cancer Sci. 2008)。また、昨年度行ったERE-GFP導入細胞を用いた子宮癌微小環境の解析をさらに進め、子宮癌間質が乳癌の間質と同様、アロマターゼを介した癌細胞のER活性可能を有することを明らかにした。また、ウイルスベクターにERE-GFPを構築し、手術時に得た子宮癌検体の初代培養に導入し、原発の腫瘍のER活性化能を定量し、多くの子宮内膜癌で、乳癌と同様の高いER転写活性を有することを明らかにした(Matsumoto et.al. Endocrine-Related Cancer 2008)。
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