研究課題
ストレスは様々な疾病の成り立ちに深く関わっているが、ストレス防御の中枢として視床下部のはたらきが重要である。さらに視床下部調節系として脳内ノルアドレナリン(NA)作動性神経系の重要性が指摘されている。視床下部調節系として橋領域の青斑核(LC)、延髄領域の孤束核(NTS)、および延髄腹外側部が重要とされるが、質的量的な関与の度合いは不明である。本研究の目的は、いかなる種類のストレスに応答して脳内NA神経系がはたらくか、複数存在するNA神経核のうちいずれが関与するのか、NA系と他の調節系はいかなる関連性を有するか、などの問題を解明することである。この目的達成のため、NAニューロンにヒトIL2受容体蛋白を発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを用いた実験を行った。我々はTgマウスのNA作動性神経核にヒトIL2受容体に特異的なイムノトキシンを注入し、NAニューロンのみを局所的に破壊するモデルの開発に成功し、このモデルマウスを用い、神経内分泌学的ならびに行動学的手法を用いた検討をおこなった。LC内イムノトキシン投与後1週間で、大脳皮質や海馬などの脳領域でNA含量が半減し、2週後に90%以上の減少が認められた。LCからNA作動性ニューロン投射を受けるこれらの領域内チロシン水酸化酵素陽性神経終末が著明に減少した。LC破壊後1週の実験では高架式十字迷路、open field、marble burying試験などにおいて、対照と比較し不安の減少する傾向が認められた。LCと不安の関連性が強く示唆された。
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J Neuroendocrinol (印刷中)
Ann NY Acad Sci 1129
ページ: 47-54