研究課題
1)肥満症と神経系の関連肥満発症への神経系の関与を、中脳切断ラットを用いて検討した。中脳切断ラットは、術後1週間目から過食による極度の肥満を呈することが明らかになった。同ラットでは、末梢の満腹シグナルであるCCKやPYYの作用が完全にキャンセルされるだけでなく、血行性に脳に到達し、エネルギー消費亢進に作用するレプチンの効果も有意に減衰していた。これらの結果から、中脳切断ラットでは、末梢からの情報伝達とその処理の異常により、エネルギー恒常性破綻を来たしている可能性が示唆された。脳内の摂食・エネルギー代謝関連物質の遺伝子発現には有意な変動は見られなかったが、褐色脂肪細胞でのUCP1発現が減少傾向にあり、エネルギー消費の低下が想定された。術後1週以降では、インスリン抵抗性やレプチン抵抗性も認められ、過食による肥満症の病態モデルと位置づけること可能である。2)高脂肪食耐性ラットの解析離乳直後のラットを1週間普通食で飼育し、普通食と高脂肪食の2群に分け、体重および摂餌量を連日測定した。高脂肪食給餌2-3週目から、高脂肪食ラットの約10%が普通食摂取群の平均体重を下回る高脂肪食耐性(DR)であることが判明した。DRラットは、肥満ラットに比べ内臓脂肪の蓄積がきわめて少なく、脂肪細胞のサイズも普通食ラットとほぼ同じであった。内臓脂肪の遺伝子解析では、脂肪合成系に関与する分子の発現が低下傾向にあり、脂肪酸β酸化に関わる分子の発現は増加傾向にあった。DRラットの末梢ホルモンの値には、有意な変化を示すものはなかったが、インスリン感受性がきわめてよいという特徴が認められた。DRラットの脳内摂食関連物質の遺伝子発現には有意な変化を示すものはなかった。これらの結果を基に、現在、DRラットの脂肪組織で特異的に変動する分子に着目し、in vitroおよびin vivoでの機能解析を進めている。
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