研究概要 |
同種造血細胞移植においては移植片対宿主病を抑制しつつ、移植片対白血病効果を誘導することがその安全性と有効性において極めて臨床的に重要である。このような理想的な細胞療法を目指して、臍帯血のCD4陽性分画からCD3/CD28ビーズとIL-15, TGF-βを用いて免疫制御性CD25/CD4細胞(Treg)を、そしてCD4陰性分画からはOKT3とIL-15を用いて抑制性NK細胞受容体(CD94)発現細胞障害性CD8細胞を同時に増幅しうることを明らかにした。 臍帯血CD4陽性分画から増幅された免疫制御性CD25/CD4細胞(Treg)は細胞数依存的にリンパ球混合培養試験を抑制し同種反応性を抑制していた。また、CD4陰性分画から増幅された抑制性NK細胞受容体(CD94)発現細胞障害性CD8細胞はHLA class Iを発現していない白血病細胞株K562やHLA class I発現が低下している患者白血病細胞を障害することが明らかとなった。さらに、免疫制御性CD25/CD4細胞は抑制性NK細胞受容体(CD94)発現CD8細胞の細胞障害性を抑制することはなかった。従って、免疫制御性CD25/CD4細胞Treg細胞は同種造血細胞移植後の同種免疫反応を抑制しひいては移植片対宿主病(GVHD)を沈静化する効果が期待されると同時に、抑制性NK細胞受容体(CD94)発現細胞障害性CD8細胞はHLA class I分子の発現が低下あるいは消失している白血病細胞や癌細胞を攻撃する効果が期待された。 本研究により臍帯血を用いて細胞障害性CD8細胞による移植片対白血病(GVL/T)誘導効果と免疫制御性CD4細胞による移植片対宿主病(GVHD)抑制効果を可能としうるそれぞれの細胞分画を同時に増幅できることが明らかとなり、同種造血細胞移植における究極の命題であるGVHD/GVL制御を可能にする細胞療法に展望が開かれた。
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