研究概要 |
巨核球造血、血小板産生におけるapoptosisの関与を明らかにするために、vav promotorのコントロールによって、血球系細胞にのみBc1-2タンパクを強制発現させたvav-bc1-2TGマウスのphenotypeを解析した。TGマウスにおいては、巨核球(MK)、造血幹細胞ともにトロンボポエチン(TPO)枯渇時に、WTに比べて有意にcaspase-3,-7が活性化し難く、これらの細胞がapoptosisに陥り難いことが確認された。TGマウスでは巨脾のために定常状態の血小板数がやや低下していたが、脾摘後の血小板数はWTマウスと差がなかった。これら脾摘後のマウスに5-FUを投与し血小板減少状態を誘発したところ、TGマウスでは血小板回復期のovershootがほとんど認められなかった。回復期のMKを回収しその血小板産生能をin vitroで検討したところ、TGマウスとWTで差を認めなかったものの、MK数はTGマウスで有意に減少し、巨核球ploidyの解析を行ったところ、TGマウスでは8N以下の幼若MKの著減を認めた。このことより血小板産生亢進時に、TGマウスでは幹細胞からMKへの分化が遅れることが示唆された。それぞれのマウスの造血幹細胞を精製しTPO存在下において培養したところ、MKへの分化能が低下していることが証明された。同様に、caspase阻害剤存在下においては、造血幹細胞からMKへの分化が阻害されたので、MK系への分化においてcaspase活性化が関与することが示唆された。実際、WT造血幹細胞からMKへの分化においては、一時的なcaspase-3,-7の活性化が認められたが、TGマウスではcaspaseの活性化が有意に低下していた。以上の結果より、MK造血の初期において、caspaseの活性化が細胞分化に重要な役割を果たしていることが証明された。 平成19年度においては、上記caspaseの関与について解析してきたが、さらにBH3-onlyタンパクであるBimのKOマウスの解析も併行して進めており、巨核球造血におけるBimの役割も明らかになりつつある。
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