研究概要 |
抗リン脂質抗体症候群(APS)は抗体依存性自己免疫疾患であると考えられることから,抗体産生細胞であるB細胞を選択的に傷害しで抗リン脂質抗体の産生を抑制することにより,免疫不全などの副作用も少ない根治的治療法が確立できる可能性がある。そこで,実験的APSモデルマウスに対し,マウス抗マウスCD20モノクローナル抗体(MB20-11)を投与し,B細胞をターゲットとしたAPSに対する新規治療法の可能性を明らかにすることを目的とし,研究を進めている。平成19年度はWild typeの6週齢C57BL/6マウスにFreund adjuvantを加えたβ_2-GPI 20μgを後足底部に皮下注射し,4週間後,同量のβ_2-GPIをboosterとして皮下投与することによりマウスAPSモデルを作成した。 上記APSモデルマウスに対し,マウス抗マウスCD20抗体であるMB20-11 150μgをマウス尾静脈より静脈投与した。生理的食塩水静脈投与群を対照群とした。APSモデルマウスはβ_2-GPI初回投与4週後より血小板減少,APTTの延長傾向を示し,8〜12週後にその変化は最大となり,また抗カルジオリピン抗体(aCL)も有意に上昇した。β_2-GPI初回投与と同時にMB20-11を投与すると8週後の血小板減少,APTT延長,aCL上昇は有意に抑制された。血中B220陽性B細胞はMB20-11投与翌日に測定感度以下となり,このB細胞の消失は8週間持続した。 以上の結果より,抗リン脂質抗体の産生およびこれに伴う血液学的異常にはB細胞による抗体産生能が必要であり,B細胞を制御することにより本疾患の根治療法につながる可能性が示唆された。
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