研究概要 |
抗リン脂質抗体症候群(APS)は抗体依存性自己免疫疾患であると考えられることから,抗体産生細胞であるB細胞を選択的に傷害して抗リン脂質抗体の産生を抑制することにより,免疫不全などの副作用も少ない根治的治療法が確立できる可能性がある.そこで,実験的APSモデルマウスに対し,マウス抗マウスCD20モノクローナル抗体(MB20-11)を投与し,B細胞をターゲットとしたAPSに対する新規治療法の可能性を明らかにすることを目的とし,研究を進めている.平成19年度は抗リン脂質抗体の産生およびこれに伴う血液学的異常にはB細胞による抗体産生能が必要であり,B細胞を制御することにより本疾患の根治療法につながる可能性が示唆された. そこで平成20年度は実験的APSモデルマウスにMB20-11投与16週後より4週間隔でB細胞数,APTT, aCL, aCL/β_2GPIを測定しB細胞除去療法による抗リン脂質抗体産生抑制効果が持続する期間を検討した.その結果,B細胞はMB20-11投与20週後から出現し,投与30週後には投与前値に復した.一方,血小板数,APTTは投与40週まで正常値を維持し,aCL,aCL/β_2GPIは投与20週より上昇傾向を示したものの40週後まで,投与前値より有意に低値を示した.以上の結果より本モデルにおいてはB細胞除去療法がAPSの痕治療法となりうる可能性が示唆された.
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